遠州秋葉奥・白倉村の又蔵を助けた山男
どんな伝承か
『桃山人夜話』五に見える話である。遠州秋葉の山奥には山男というものがいて折々現れ、杣や山賤のために重荷を負って里近くまで送り、また山中に戻る。賃銭を与えても取らず、ただ酒を好んで与えれば喜んで飲んだという。昔、同国の白倉村に又蔵という者があり、家に病人が出て医者を呼びに行く途中、谷に踏み外して落ち、木の根で足を痛めて歩けなくなった。谷底にいたところへ山男がどこからともなく現れて又蔵を負い、屏風を立てたような崖を易々と登って医師の門口まで来ると、かき消すように失せた。又蔵が礼にと竹筒に酒を入れてその谷へ行くと、山男が二人まで出て来て飲み、大いに喜んで去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。