山の神の産を介抱したマタギ
どんな伝承か
佐々木喜善の東奥異聞には、陸中の上閉伊郡と羽後秋田郡のマタギの村とに、同じ話が口伝として残っていると報告されている。羽後の方では八人組と十人組という二組のマタギがあり、一方は産の忌を恐れてすげなく断ったのに対し、他方は小屋の頭がただの女性ではないと見て快く泊め、小屋で産をさせて介抱をした。陸中の山村では猟人の名を万治磐司といい、磐司が独り血の穢れを厭わず親切に世話をすると、十二人の子を生んだと伝える。いずれも山の神がその好意をめでて、後々まで山の幸を保障したことは同じであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。