仁原山鉱山の三人の裸の山女
どんな伝承か
今から三十年余り前、肥後の東南の隅にある湯前村の奥、日向の米良との境の仁原山にアンチモニーの鉱山があった。その事務所に住んでいた原田瑞穂という人が、夜に少し離れた下の小屋へ行き人足たちと夜話をしていると、時々ぱらぱらと屋根に小石を打ちつける音がした。気味が悪くなって帰ろうと小屋を出て裏の小道を少し行くと、突然背の高い女が三人横から現れ、一人が原田の手を強くつかんだ。三人ともほとんど裸で、しきりに何か言うが恐ろしくて聞き取れなかった。大声を上げると小屋から大勢が出てきたので、女は手を離し足早に峰の方へ登っていった。これも小山勝清の話で、原田は当時まだ若かった小山の叔父である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。