因州蘆澤山の鷹匠と山父
どんな伝承か
『雪窓夜話』上巻に載る因幡の話である。西村某という鷹匠が、鷹を捕ろうと知頭郡の蘆沢山の奥に入り、小屋を掛けて一人で暮らしていた。夜寒の頃、庭で火を焚いて当たっていると、丈六尺余りで老人のような者が来て、黙って火に寄り鼻をあぶってうずくまった。髪は赤く縮れ、顔は人でも猿でもなく、全身に毛が生えていた。剛胆な西村は驚かず、どこに住む者かと問うたが答えず、しばらくして帰り、後をつけたが闇で行方は知れなかった。その後また来て小屋を覗いたので、今夜は火はないぞと言うとそのまま帰った。里人に話すと、それは山父というもので人に害はしないが、これを犯すと山が荒れると言ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。