遠州秋葉の酒好き山男
どんな伝承か
『桃山人夜話』巻三によれば、遠州秋葉の山奥には山男というものがいて折々姿を見せる。杣や山賤のために重い荷を負い、里の近くまで送り届けてはまた山中へ戻る。家もなく身内もなく、どこに住むのか知る者はいない。賃銭を与えても受け取らず、ただ酒を好み、与えれば喜んで飲む。言葉はまったく通じないので、口のきけぬ者を相手にするように身振りで示すが、悟るのが非常に早い。生まれも死にも知られず、丈は六尺より低い者はいない。山の気が化して人の形になったのだという説もあると記されている。柳田はこれを、山男が酒のために働くという話の例として挙げている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。