大瓢箪を残して消えたアサリ仙人
どんな伝承か
鈴木鼓村は磐城亘理郡小鼓村の旧家の出で、それゆえ号を鼓村といった。今から百二十年ほど前、鈴木家へ折々物を貰いに来る老人があった。人と物を言わず、物を遣ると口の中で唱え言をするが、何を言うのか少しも聞き取れない。飯は両手に受けて副え物も無しに食い、酒は大好きで、一斗二三升も入るかと思う大瓢箪を携えて来た。生の貝を石の上で砕いて食ったので、人は戯れにこれをアサリ仙人と呼んだ。帰る跡をつけた者があったが、山に入ると急に足早になり、たちまち姿を見失った。ある日の朝、玄関の柱に大瓢箪を括り付けたきり、永久に来なくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第4巻』を全822話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。