相撲の三吉さんに詫びた力士伊勢海
どんな伝承か
秋田でいう「さんきち様」とは、相撲好きの者が山へさらわれて山人となったものだという。それゆえ秋田では、見なれぬ者が村相撲に交じっていると、あれはさんきちさんではないかと言い合う。昔、五所川原出の力士伊勢海利助が、それと知らずにこの三吉さんを負かしてしまった。その夜、伊勢海が宿に帰って湯につかっていると、下女に化けた三吉さんが背を流そうといって現れ、風呂桶もろとも伊勢海を運んでしまった。伊勢海は察して三吉さんに詫び、あわてて逃げ去ったという。明日の土俵が怖く、また三吉さんの面目を潰さぬためであった。伊勢海の追懐碑は五所川原にある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。