財宝の秘密を守るため下僕を斬った中野長者
どんな伝承か
中野長者鈴木九郎の下僕殺しの伝説。足利中期の応永の頃、淀橋の近くに住んでいた鈴木九郎は、渺茫たる地所を持ち婢僕を召し使う分限者で、中野長者と呼ばれていた。しかし性来狭量貪欲で、高利貸しの取立てに明け暮れる無慈悲な男であった。彼は野盗や野火を恐れて財宝を野原の穴に隠し、期末ごとに下僕に背負わせて埋めに行ったが、秘密が漏れることを恐れ、その帰り道の橋のたもとで下僕を斬り殺しては川へ蹴込んだ。こうして命を奪われた忠僕は十名にも及んだと、多宝山成願寺縁起にも記されているという。
原典より
利慾の爲に非道の鬼と化した彼は、己の命に従つて闇の木立へ使する忠僕から永遠に舌を奪う爲に、その都度斯うして歸途の路上にその生命を断つたのである。—— 行楽と史蹟の武蔵野(寺島裕・1937年(昭和12年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
行楽と史蹟の武蔵野(寺島裕・1937年(昭和12年))
『行楽と史蹟の武蔵野』は、寺島裕が昭和十二年に著し、新生堂から発行した武蔵野の史跡探訪記である。狭山丘や山口貯水池の周辺から、行田・粕壁・生田・淀橋・中野・柴又・多摩御陵などの社寺、城址、古戦場、塚を歩いて訪ね、交通の便とともに由緒や伝説を記す。小橋一太と新井堯爾の序文、著者の自序を巻頭に置き、前著「史蹟の武蔵野を探ねて」に続く行楽案内として土地ごとの短い節を連ねる。