笙の岩屋で頓死した日蔵の地獄めぐり
どんな伝承か
『北野天神縁起』の記事。承平四年(九三四)、大和の修験道場である金峯山の笙の岩屋にこもって修行していた日蔵上人が急死し、十三日後に生き返った。その間に上人は三界六道の他界をめぐり、醍醐天皇が罪なき菅原道真を流罪にした咎で、地獄の獄卒に責め苦しめられている光景を目にしたという。著者は、これは修行の末に見た夢だったのかもしれないとし、修験道では山を母胎とみなし、山中の洞窟での修行を他界めぐりと再生の儀礼ととらえていたことを述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
異界巡礼(小松和彦)
『異界巡礼』は、小松和彦が著した民俗学の論集である。狐が人に化ける方法と如意宝珠、蓮如絵伝の異人、鬼退治譚と怨霊、家の盛衰をめぐる民話、夢信仰、巫女と陰陽道、洞窟や龍宮の他界観、人を神に祀る信仰、神隠しなどを、昔話・説話・絵巻・お伽草子と高知県物部村などでの調査をもとに論じる。論考と随想を部に分けて並べ、「民俗のランドスケープ」の部には妖怪、凧上げ、祓い、霜月祭り、呪い人形をめぐる小文を収める。