住職の死を告げて這い出す無縫塔
どんな伝承か
静岡県の相良町西萩間にある龍門山大興寺は、応永十五年に大徹宗令禅師が開いた名刹である。石の学問に通じた禅師は、臨終に際して、寺の裏山から無縫塔石が必ず出るので自分の墓石にせよと遺言した。弟子たちが探し回っても見つからなかったが、皆が合掌して信じると裏山で重い石の落ちる音がし、翌朝、谷川に半ば浸った石が見つかった。以来、住職の死が近づくと裏山の竹やぶから石が這い出すといい、今の住職も昭和十一年と十五年、先代二人の死の前に石が落ちたのを見届けた。墓地には同じ形の無縫塔が二十八基並んでいる。
原典より
朝もやをついて、寺の裏山にくると、無縫塔石は澄んだ谷川の水に半ば浸って、弟子たちの来るのを待っていた。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。