権現の風に救われた六助の河童相撲
どんな伝承か
天正のころ、豊前国中津大江郷に、六尺を超える大男で怪力の若者六助が住んでいた。山仕事で遅くなった帰り道、二尺ほどの童に相撲をせがまれ、軽くあしらうつもりで組むと、童は六助と同じほど重く大きくなり、体はぬるぬるして容易につかめない。ようやく腰を抱えて土手へ投げつけると、童は奇妙な声をあげて堀へ飛び込んだ。助けようと近づくと、堀から三十匹ほどの河童が現れて取り囲む。六助が心の中で権現の助けを念じつつ訳を話して詫びると、権現の方角から一陣の風が吹き、河童たちはかき消えたという。
原典より
すると、権現の方より一陣の風がさっと吹いて来た。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。