合掌の夜に現れた無縫塔石
どんな伝承か
大興寺の大徹宗令禅師は臨終の床で、宋の問答に出る自然石の無縫塔石が寺の裏山から出てくるはずだから、それを自分の墓石にせよと門弟に言い残した。弟子たちは裏山を日暮れまで探し回ったが見つからず、寺に戻って途方に暮れた。一人が、石が出ると信じる者は合掌してほしいと言うと全員が手を合わせ、そのとき裏山から重い物の落ちる音が響いた。夜明けに読経しながら裏山へ向かうと、無縫塔石が谷川の水に半ば浸かっていた。石は境内に安置され、その後この寺では住職の死期が近づくたびに、裏山から無縫塔石が這い出してくるという。
原典より
朝もやをついて、寺の裏山にくると、無縫塔石は澄んだ谷川の水に半ば浸って、弟子たちの来るのを待っていた。—— 日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪伝説(小笠好恵・1966年(昭和41年))
『日本の妖怪伝説』は、小笠好恵が各地に伝わる奇談・怪談を読み物にまとめた伝説集で、序は昭和四十一年五月付である。浅茅が原の一つ家、四谷怪談、九尾の狐、安達が原の黒塚、道成寺、鍋島の化け猫など、岩手から熊本までの四十五話を、伝えられた形をなるべく崩さずに書き直し、おおむね東から西へ並べる。雨月物語や小泉八雲など書物に拠る話のほか近年の体験談も混じり、一部の話の末にはゆかりの寺社へ行く「順路」を付ける。