夜ごと真水を入れて塩を抜いた蓮田
どんな伝承か
南行徳の女性が語る蓮づくりの苦労。御猟場近くの田を一町歩借り、蓮は塩水では育つまいと慈姑を植えたが、二、三日で鴨に全部食われた。慈姑は浅いから駄目だと今度は四町八反を借りて蓮を植え、人がやめた土地は駄目だと止められても聞かなかった。沖に近い側は塩水で下葉が枯れたので、機械とモーターを買い、皆が寝た夜中に江戸川の真水を入れて堰の中の塩水を沖へ捨てる作業を毎晩繰り返した。三年ほどで塩が抜けて普通に育つようになり、田に立っても見えないほど大きな花が咲き、毎日トラック一台分を出せるまでになった。若い時に寝なかったから今は昼も夜も寝ていると笑う。
原典より
ご猟場の近くの田んぼを一町歩(九九○○平方メートル)借りて、蓮じゃあ塩水で出来めえから、慈姑やってみようと思って一町歩慈姑植えて二、三日たって見に行ったらご猟場のそばだから、かもが全部食っちゃってね、がっかりしちゃって慈…—— 市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
市川の伝承民話 第1集(市川民話の会・市川の伝承民話・1980年(昭和55年))
『市川の伝承民話 第1集』は、市川民話の会が昭和五十五年に編んだ民話の資料集である。市川市教育委員会の事業として昭和五十四年度に千葉県市川市の国分・北国分・行徳・南行徳で行った採訪調査のうち、テープ起こしを終えた語りを、方言も残して話者の息継ぎのままに記録している。世間話・伝説・昔話・唄・生活譚の五部に分けて地区別に並べ、話末に話者・地区・記録者の名を添える。