五軒の犬神がかみ合う見立ての騒動
どんな伝承か
ある年、勝浦郡勝浦町のある部落で、阿南市橘の祈祷師を招き、数軒の家がそろって祈祷による見立てを受けた。すると五軒の犬神が互いにかみつき合い、かみつかれ合っているという結果が出て、小さな部落の中が大もめになった。町長が仲裁に入り、以後その祈祷師を部落に入れないと決めて、ようやく丸く収まったという。犬神筋かどうかは祈祷の場で憑かれた者が口走ることだけで決まり、祈祷師の見立てこそが犬神筋を今に残しているとされる例である。
原典より
先年勝浦郡勝浦町の某部落で阿南市橘の某祈祷師を招いて数戸が祈祷診断してもらったところ、この五戸の犬神が互に噛みついたり、噛みつかれたりしている結果となって、小部落内に大もめが生じ、…—— 徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究)
『徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)』は、徳島をめぐる研究叢書『徳島の研究』の方言・民俗篇の巻で、阿波の犬神を論じた一篇を収める。狸やトウビョウと並ぶ阿波の憑きものとしての犬神について、起源の伝説、正体とされる小犬や鼠、犬神筋の分布と女系の継承、憑依の動機と症状、祈祷による犬神落しを、筆者の聞き書きと室町期の下知状、郡誌や『阿波民俗』などから述べる。七節に分け、昭和期の犬神をめぐる事件と迷信打破の道で結び、末尾に参考文献の註を掲げる。