葉擦れを追っ手と誤り自害した城主夫人の姫塚
どんな伝承か
市原市の雀ヶ崎一帯ではとうもろこしを作らない。永禄七年、北条氏政が池和田城を攻めて落城が迫ったとき、城主多賀蔵人の夫人は一人の侍女とともに城を抜け出し、近くの畑に身を潜めた。そこへ背後で物音がしたので敵の追っ手と思い込み、もはや逃れられぬと早合点して二人は自害してしまった。物音の正体は、風に揺れたとうもろこしの葉擦れだった。村人は二人の死を哀れんで塚を二つ築き、姫塚と呼ぶようになった。以来、この村では二人に同情してとうもろこしを植えないのだという。
原典より
市原市雀ヶ崎一帯ではとうもろこしを植えない。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。