晴明を追って身を投げた延命姫
どんな伝承か
銚子の野尻に垣根の長者と呼ばれる富豪がいた。一人娘の延命姫は顔に大きな痣があり、三十になっても縁談がなかった。姫は近くの東光院に住む美青年、のちの陰陽師安倍晴明を見初めて婿にと望むが、晴明は容貌を嫌って断り、親田の真福寺へ逃れる。それでも追ってくるので、晴明は小浜の磯見川河口の通漣洞に履物を置いて入水を装い、身を隠した。履物を見た姫は晴明が死んだと思い込み、自らも身を投げたという。のちに川口の魚の腹から姫の櫛が出て、里人が歯櫛明神として祀ったのが今の川口神社で、豊漁や縁結び、容姿の神とされる。長者の屋敷跡という垣根不動尊には長者と姫の供養碑がある。
原典より
昔、銚子の野尻に垣根の長者と呼ばれる大金持がいた。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。