南町の紺屋で働いた与三郎の実像
どんな伝承か
歌舞伎の「与話情浮名横櫛」は、長唄の唄い手四世芳村伊三郎が素人時代に木更津で博奕打ちの妾と通じ、露見して無残に斬られながらも命を拾ったという講釈をもとに、三世瀬川如皐が仕立てたものだという。与三郎のモデルは大網白里の清名幸谷に生まれた中村大吉で、木更津へ出て南町の島屋という紺屋で型付職人をしていたと伝わる。お富は茂原の生まれとする説もあるが定かでない。世話になっていた旦那は建干網の網元、坂木の源次という男だった。二人は後に結ばれて幸せに暮らしたといい、墓は南品川の寺にあるが、与三郎の墓と称するものは県内にも複数ある。
原典より
歌舞伎世話物「与話情浮名横櫛」で広く知られているこの芝長唄の唄い手四世芳村伊三郎が、まだ素人で木更津に遊んでいた頃、そこの博奕打ちの妾と密通したことが露見し無惨な斬られかたをしたが、不思議と命拾いをして江戸に出た、という…—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。