蕨の恩を説く蝮除けの呪文
どんな伝承か
ある時のことで、夏の盛りであったという。病気の蝮が日の光に焼かれ、疲れきって動くこともできないでいた。その時まで日の光に生えていた早蕨は、蝮の苦痛を一心に憐れに思って、か弱い手でそっと蝮の鎌首を持ち上げてやり、ようやくのことで日の光の直射から免れさせてやった。それからこちら、薮に入る時は「奥山の姫まむし、蕨の御恩を忘れたか」と唱えると、その蝮を避けることができたという。
原典より
ある時の事で、夏の盛りであつたといふ。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。