扉を閉ざせぬ報恩寺の厨子
どんな伝承か
龍堂寺から西村の報恩寺区へ移った報恩寺の厨子には、不思議な言い伝えがある。昔、この厨子の扉を閉ざすと地面が震動したため、それ以来決して扉を閉めず、常に開けたままにしてあるという。本尊が信仰する里をいつも眺めていたいためだとも言われるが、一説には、もとの龍堂寺の地を恋しがって、常にその方角を見ていたいからだとも伝える。房総志料によれば報恩寺には徳治元年三月の銘のある古鐘があり、著者はその銘にも龍堂寺の名が刻まれているのだろうと記している。
原典より
西村報恩寺区に移つてからの報恩寺のお厨子は、昔、不思議にも扉を閉ざすと、地が震動するので、それからは、決して扉を閉ざさず、常に開けたままで置いてある。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。