行者の従えた鬼を祀る前鬼山
どんな伝承か
海上郡高神村の道を行くと、高みに一つの山がある。これを前鬼山というのである。伝えるところによれば、大和葛城の役の行者が葛城山に籠って修行していたとき、前鬼・後鬼という二鬼を法によって縛り、これを従えて精舎を建てた。その札所がすなわちこれであるという。そして今からおよそ二百年ほど前に、土地の眼右衛門という人が参詣して、ここに前鬼を祭って信仰した。これより前鬼山と言うのである。山の麓の人々は、正月・五月・九月の定まった日に集まって前鬼祭を行い、今もなおその祭が続いている。『海上郡誌』に見える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 下総の巻(藤澤衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 下総の巻』は、藤澤衛彦が編著し、大正七年の緒言と大正八年の序を添えた下総国の伝説集である。平将門・佐倉宗吾・真間の手児奈・累などを中心に、千葉県と茨城県西部にまたがる旧下総の城跡・寺社・墓・橋・井戸などにまつわる伝説を、地誌や古記録の引用を交えて収める。緒言で百七十九編を収めると述べ、国名の由来から始めて、話ごとに所在の町村名を付した見出しを立てて並べる。