茅原寺の魔の部屋に出た大入道
どんな伝承か
奈良の御所町に近い掖上村茅原の茅原寺は役行者の開基で、明治の初め頃までは大峰へ向かう行者で賑わったが、今は荒れ果てている。寺には欄間まで一面に桜を描いた八畳二間続きの桜の間があり、昔から魔の部屋として誰も寝なかった。昭和三年の夏、六十歳の尼僧と二階を借りて勉強する近所の森青年がいる寺に、無銭旅行中の東京の大学生が宿を乞い、魔の部屋の話を笑ったので、その晩桜の間に寝ることになった。夜半、身体が重く首が苦しくて目を開けると、背丈七尺ほどの大入道が馬乗りで首を締めていた。声も出ずにもがくうち姿は消えた。翌日調べると、寺が真宗に替わる時に反対して追い出され、近くで変死した住職の恨みだと分かった。
原典より
* 手を洗う亡者 (204)* 本堂へ来た女 (207)* ブロッケンの幽霊 (210)* セントエルモの火 (211)* 狐狗狸の話 (213)* タッピングで弟の死を予知す (214)*…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。