勝手に元へ戻る朝日地蔵尊
どんな伝承か
大阪市の今市にある朝日地蔵尊は、森小路の地蔵さんとも呼ばれる。一メートルほどの粗い石の坐像で、額には諸病の人を助けるという歌が刻まれている。庄屋の浅田藤右衛門は、今市の領分にありながら森小路の人々に祀られるのは面白くないとして、地蔵を今市の小宮へ移した。ところが地蔵はひとりでに高瀬井路を転がって元の場所へ戻り、以来、勝手に逃げなさるといわれる。舟押しの邪魔になると楫で頭を殴った男は間もなく死に、地蔵の顔が欠けているのもそのときのことだという。酒を好み、頭からいくら注いでも飲み干してしまうとも語られる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。