頼朝の腰掛石が残る野島崎
どんな伝承か
白浜村の一角をなす野島崎は『千載集』や『回国雑記』にも詠まれた景勝地で、明治二年創設の灯台で知られるが、古くは潮の干満で孤島となる所だった。里老の伝えでは、文安二年に里見義実がこの地に漂着し、岩礁で難儀した舟を助けた漁夫に、その持っていたカセにちなんで加世越之助の名を与えたといい、今もその姓を継ぐ者がいる。それより前の治承四年九月十一日には源頼朝が立ち寄り、島の西の御腰掛石は頼朝が腰掛けた石、銚子池・盃の池は頼朝の酒がこぼれて池になったものと伝える。巨石に刻まれた野島山の三字も頼朝の筆という。孤島だった野島は元禄十六年の地震と津波で砂土が埋まり、陸続きになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1919年(大正8年))
『日本伝説叢書 安房の巻』は、藤沢衛彦が大正八年に編んだ安房国(千葉県)の伝説集である。天富命の渡来や源頼朝・里見氏・日蓮にまつわる英雄伝説を中心に、社寺の縁起、風俗・信仰、船幽霊や一本足の蛸などの特異な伝承を、『安房志』『房総志料』などの地誌や寺伝・口碑から引いて収める。緒言と「安房国と牛」と題する序を巻頭に置き、鋸山から小湊まで各話に所在の郡村大字を添えて土地ごとに並べ、緒言では百八十六種を蒐集したと記す。