洪水を触れ歩いた長髭の老翁
どんな伝承か
寛政十年五月一日、東津軽郡造道村の松森・古館一帯が大水に押し流され、そのあたりの人々は古館という所へ移り住んで、その村は今も残るという。これに先立ち、八束もの長い髭をたくわえた老翁が幣を手にして、津波が来る、山から水が湧く、多くの人が失われると触れ回り、どこへともなく歩き去った。ほどなく洪水が起こって多くの人命が失われ、山が川に変わった所もあった。これを今も白髭水と呼び伝えている。
原典より
寛政十年五月一日、松森、古館一帶は白髭水といふのに押流されて、そのあたりの人も古館といふ處に移つて、その村は今もあるといひ、これは昔、八束の長髭ある老翁の幣うちとりて津浪よりかこん、山より水の湧なん、人もあまた失ひなんと…—— 日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年))
『日本伝説名彙』は、柳田國男の指導のもとに日本放送協会が昭和二十四年に編んだ伝説の名彙である。全国の伝説を、その拠り所となる木・石・岩・橋・清水・淵・塚・坂・屋敷・地蔵などの地物の名ごとに集め、伝わる県郡村名を付して、郡誌・市町村誌や伝説集、民間伝承誌などの出典を括弧で示す。冒頭に柳田の「傳説のこと」を置き、木・石岩・水・塚・坂峠・祠堂の部に分けて、巻末に資料の解説と種類別索引を付す。