えんこうの子を産んだ女房と藁舟の祈祷
どんな伝承か
今から百年ほど前の話という。麻の糸を績んで地機で織るのが女の仕事だったころ、ある女房が苧を績んでいると急に寒気がし、それから具合が悪くなって仕事が手につかなくなった。家で休むうちに腹が大きくなり、月満ちて産んだ子は歯が生えていて這って逃げ出す。えんこうの子だと、岩の上で焼き殺した。女は難産で亡くなった。若い夫は後妻を迎えたが、子ができても育たない。石槌神社で見てもらうと、変な子を産んだことが障っていると言われ、二日三晩祈祷して、供え物を載せた藁の舟を川の瀬に流すと、舟は瀬を上っていった。それから子が育つようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。