川端で夫を待つ妻が産んだ猿猴の子
どんな伝承か
高瀬口に舟着きのあった頃、隣に豊蔵という舟乗りがいた。妻のおつるは夫を溺愛し、炭を積んだ舟が川を下って見えなくなるまで見送り、翌朝の積荷の支度をすませては川下を向いて夫の帰りを待った。晩春のある夕方、生ぬるい風でおつるの前がまくれ、押さえた手にぬるりとしたものが触れて、金切声をあげて倒れた。駆けつけた小船運送屋の元締め渡辺庸太郎夫婦に、夢のようだと語ったという。年を越して翌年、おつるは大層な難産で子を産み、二日目に立ち会った医師の門田雄哉は不思議な赤児を見たといった。おつるの産んだ児は猿猴であったそうな。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。