猿猴の子といわれた奇形の赤子
どんな伝承か
藤之川から中半へ来た古城千吉は子沢山であった。昭和の初年頃にまた子が生まれて笑いあっていたところ、その子は普通の子と違って甚だしい奇形であった。頭がくぼみ、頭から胴も妙で、手の長いことは格別で、たいへんな難産だった。ただ事ではないというので、他所から弓打祈禱師を雇って占ってもらうと、猿猴が出てきて「この子はわしの子じゃ、人間は馬鹿もんじゃ」と嘲ったという。その子はやがて死に、猿猴の子を買いに来る者もあって商談が整いかけたが、藤之川の親戚筋が見世物にされるのを恥として止め、御祈禱をして葬ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。