弾を投げ返した猿は天狗の化身
どんな伝承か
埼玉県秩父市の鳥首峠の登り道にある白岩の猟師の、明治のころの話。ある日持山へ猟に入ったが獲物が見つからず、苛立って歩き回っていると、前方の木に猿が一匹いた。弾を込めて撃ったが猿は平然としており、二発、三発と撃ち続けて、とうとう持参の弾を撃ち尽くしてしまった。弾が尽きたとみるや、猿はそれまでの弾をまとめて猟師の頭の上へ投げ返した。猟師はこれは天狗さまの化身に違いないと真っ青になって山を駆け下り、山の神さまの前で、二度といたずらはしないと震えながら一日中祈っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。