佐味八幡社から崖へ移った天狗の礫
どんな伝承か
石川県七尾市の話。筆者の母の里で、七尾湾の東の端にある佐味の八幡社の境内にも、かつて天狗がいたという。叔父を訪ねたついでに確かめると、今はおらず、木の上の暮らしをやめて崖の上や岩屋に移ったのだという。叔父の話では、家から七、八丁山手の小川の片側が高い崖で、上にすり鉢状の盆地がある。樹上の巣がなくなってから天狗はみなこの崖へ移ったと言いふらされたが、叔父は気にも留めず、持ち地があるのでときどき仕事に出かけていた。ところが大正のある年、用事の都合で遅くなったところ、突然向こうの崖から砂や小石を打ちつけてくるものがあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。