ある家に伝わる清六天狗の衣
どんな伝承か
遠野の町のある家には、天狗の衣が伝えられている。昔この家の主人と懇意にしていた清六天狗という者が着ていたものだという。清六天狗は花巻あたりの人で、酒が好きで常に小さな瓢箪を持ち歩き、酒代にはよく錆びた小銭を払っていた。その末孫は今も花巻の近村に住み、人は天狗の家と呼んでいる。この家の娘が近ごろ女郎になって遠野の店に住み込んだが、いくら戸締りをしても夜どこからか出て行き、人の林檎園に入って食べるのを楽しみにしていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。