庚申堂帰りに山犬から火を借りた藤助
どんな伝承か
北設楽郡では、明治二十年代ごろに離山が払い下げられて庚申堂が建ち、六十日ごとの庚申の日には近在の道楽者が集まって博打を打っていたという。そのころ、藤助という人が庚申様からの帰り道で煙草を吸いたくなったがマッチがない。道端で煙草を吸っている者がいたので、これ幸いと火を借りようとしたところ、それは思いがけず山犬で、目を火のように怒らせていた。恐ろしいうなり声を上げられ、藤助はたまらず山を逃げ下ったという。筆者は、類話もあるので真偽は分からないが、三、四十年前まで山犬がいたのは確かなようで、今は姿がないと記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。