闇の中で火と見えた狼の眼
どんな伝承か
市野瀬の人が、夜になって山を下ってくると、真っ暗闇の中に煙草の火のような明かりが見えた。自分も急に一服したくなり、キセルをくわえたまま、火を一つ貸してくれんかねと顔を近づけたところ、火の中からウォーというすさまじいうなり声が上がった。驚いて飛びのいてよく見ると、火と見えたのは狼の眼だったという。もっとも実際には、狼の眼は夜に星のように青く光ることはあっても、火の色には見えないものだとも言われている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。