提灯が消えた佃の夜道と山犬さん
どんな伝承か
明治の頃、佃というところでの話である。年老いた両親が、加茂へ嫁にやった娘に子ができたと聞き、孫を見に出かけた。その頃そのあたりは四方が竹藪で、家はなかった。馳走になるうちに日が暮れ、泊まっていけと勧められたが、明日は仕事があるからと断り、提灯を借りて帰った。夜の十時頃、今の佃の駅のあたりにさしかかると、蝋燭の火がぱっと消えた。身が引き締まるようにしんとして、後ろ二、三間から何かがついて来る気配がする。振り向けばその隙に飛びつかれるかもしれず、そのまま庭先まで戻って家へ駆け込んだ。祖母に話すと「それは山犬さんじゃ」ということになり、小豆粥を炊いて裏に出しておくと、朝にはなくなっていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。