子孫代々の亡骸を約した狼の守り
どんな伝承か
六十年も前に聞いたという話である。ある資産家の先祖が、下川や平瀬の方を通り、椿尾峠という深い山を一人で越えるうちに日が暮れた。すると狼が現れて着物の裾をくわえて引き、炭焼き窯の所へ連れていって中へ入れという仕草をする。もう一匹も来て両側で吠え立てて守ってくれ、窯の中で聞いていると、外では人臭い、確かに来たはずだという声がしたが、妖怪は近寄れなかった。朝まで守られた先祖は、礼に子孫代々の死体をやると約束した。自分一人の分と言えばよかったものを代々と言ったため、以後その家ではコンクリートで固めて埋めても遺体を掘られるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。