山猫の群れから万吉を守った狼
どんな伝承か
山口県玖珂郡本郷村(現岩国市)の話。明治初年のこと、師走の集金を終えた万吉が真夜中にひじきの峠にさしかかると、何百何千という山猫の声が近づいてきた。恐ろしさに体が震えて動けずにいると、どこからか一匹の狼が現れ、万吉の脚絆をくわえて山の尾根まで引き上げた。下の道を無数の山猫が鳴きながら通り過ぎると、狼はまた脚絆をくわえて下の道へ降ろし、帰れというように放した。万吉が礼に握り飯を作ってやると狼はうれしそうに食べ、いつのまにか姿を消した。万吉は三年目にも同じようにこの狼に助けられたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。