月岡温泉に泊まった渡辺タマコの正体
どんな伝承か
明治二六年に新潟市で生まれた樋口ハナの仲良しに、新潟市学校町の渡辺という人がいた。渡辺の家には猫が五、六匹いて、どれも人の言うことをよく聞く行儀のよい猫だった。ところがそのうちのタマという猫が怪我をして何日か姿を消し、ある日ひょっこり戻ってくると、怪我も治って元気になっていた。すると渡辺の家に、月岡温泉から「渡辺タマコ様」宛の宿泊料金請求書が届いた。不審に思って旅館に問い合わせると、渡辺タマコという女は色白のとてもきれいな人で、決して体ごと温泉には入らず、いつも手だけを湯につけていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。