飢えた祖母に鯛やハムを運んだ猫ミイ
どんな伝承か
昭和二十年頃、群馬県前橋市で一人暮らしをしていた七五歳の祖母は、戦中戦後の食糧難にあえぎながら庭を畑にして気丈に暮らしていた。祖母のかわいがっていた猫「ミイ」は、近所の戦争成金の軍関係の建築屋の家から鯛やハムの丸ごとをくわえて帰ってくるようになった。その家は高い塀に囲まれ、闇物資でぜいたくな暮らしをしていたという。ミイはそこへ台所口から忍び込んでは食べ物を持ち帰り、半分ほどを自分で食べ、残りを祖母が食べ終えるまでじっと見守っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。