寺町の松の下で折詰を奪った狸
どんな伝承か
徳島での話。ある人が婚礼に招かれた帰り道、寺町の松の下まで来ると、松の上で猫がニャオと鳴いた。見上げた拍子に何かにつまずいて転び、起き上がると土産の折詰が急に軽くなっていた。十文字に結んだ紐は少しも乱れていないので、まさかと思いながら家で開けると、鮨に添えた生姜が二、三切れ残るだけで、中身はすっかり消えていた。狸にやられたと悔しがったが、同じ晩に同じ手で折詰を奪われた客がほかに二人もいたという。ある老人によれば、魔物は人の息のかかったものを嫌うので、ご馳走には息を吹きかけておけばよいという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。