拝原川原で手を握らせた女
どんな伝承か
美馬郡と阿波郡の境に広がる拝原川原は、ふだんは水がなく、名の通り茨の生えた河原で、幅が七、八丁もあって夜はたいそう寂しい所である。西岸の拝原村のある男が、東岸の岩津へ夜遊びに行った帰りにこの河原を通っていると、年ごろの女が現れ、夜道が寂しいから連れになってくれと言う。男は狸に違いないと見て、だまして生け捕りにしてやろうと承知した。女が手を引いてくれと言うので手首を握り、しめたと思いながら家の戸口まで来た。中へ連れ込もうとすると、女は手が痛いから替えてくれと言い、もう片方の手を出した。握り替えたとたん手応えがなくなり、見ると馬の糞を握っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。