島本に化けた狸と浄光寺の阿弥陀
どんな伝承か
安宅ヨツは孫と寝ていた夜中の一時ごろ、表の戸を叩く音でふと目を覚ました。戸を開けると、いつも一緒に法話を聞きに行く島本が立っていて、州津の寺で偉い坊さんの説教があるから一緒に行こうと誘う。信心家のヨツは着替えて出たが、渦の渡し場の近くまで来て、浄光寺にお参りしてから行くと言い張った。島本は早く舟に乗ろうと手を引いたが、ヨツは浄光寺へ向かう。住職に事情を話すと、州津に説教などなく島本もどこにもいないと言われた。翌朝、本堂の阿弥陀如来の扉が一枚開いていた。のちに狸に憑かれた者が、島本に化けたが東の門で光に威圧されて逃げたと語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。