鳴門競艇の判定写真に写った幻の艇
どんな伝承か
昭和二十八年のクリスマスイブ、長崎県大村市出身でボートレースの名手とうたわれた横溝幸雄選手は、唐津競艇場で試運転中に艇が暴走し、漁船に衝突して亡くなった。翌年一月十五日、鳴門競艇場の第一レースは六艇で争われたが、スタートを確かめる判定写真にはなぜか七艇が写り、先頭には出場予定だった横溝選手の五号艇が走っていた。幻の艇として話題となり、競艇場は彼を手厚く弔った。その十年後、同郷の親友小笠原政敏選手がゴール前で判定写真の柱に激突して死に、横溝の霊が呼んだと噂されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。