船宿でマッチを化物と見た芸妓
どんな伝承か
四、五日前の夜、柳橋のある船宿での出来事。日本橋あたりの商人が、小熊という芸者を呼んで遊んでいた。座敷の灯を消してしばらく経ったところで、一人が懐からマッチを取り出して火を点けようとする。芸妓はそれを化物と思い込み、あっと一声あげて気絶してしまった。医者を呼んで手を尽くし、ようやく息を吹き返したという。歳の暮れの一笑いとして新聞が伝えた話である。
原典より
回答者・中村博(東京都在住)。—— 現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。