電球でキセルを吸いつける源兵衛さん
どんな伝承か
内宮に源兵衛という六五になる老人がいた。五十鈴川をせき止めるダム工事がようやく出来上がり、大正六年一二月から発電所が動きはじめた。いち早く内宮に電燈線が引かれ、やがて源兵衛の家にも電燈が取り付けられた。初めて電燈のともる日、源兵衛は今か今かと日暮れを待ち、ぱっと灯がつくと思わずわあっと声をあげた。しばらく見とれたあと、どれ一服といって腰のキセルを取り出し、たばこを詰めてキセルを電球に近づけ、すっぱ、すっぱと何度も吸いつけたが、いっこうに火はつかなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。