寒いから羽織をと夢で頼む故人
どんな伝承か
多久市多久町での昭和十二年の話。親類のタカハシに住むおじさんが十二月十日に亡くなった。その頃はまだ土葬で、白装束ではなく生前に使っていた着物を着せた。葬式がすんで甕におじいさんを納めるとき、つれあいが「雪があって寒いだろうから、羽織を着せようかね」と言ったが、体格のよい人だったので窮屈な思いをするかもしれないと羽織は着せなかった。ところが葬式から日も浅いうちに、つれあいのおばさんが夢を見た。「寒いから、羽織くれー」という。おばさんはすぐに羽織を墓へ持っていったそうである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。