夢で見た藪陰の家
どんな伝承か
昭和十年ごろ、語り手は板橋区練馬南町に住んでいた。あたりはまだ武蔵野の面影が濃く、雑木林とゆるやかに起伏する畑が続いていて、子供ながらひとりで歩き回るのが好きだった。ある日、藪かげを回ったところでぎょっとした。林の奥まったところに建つ家と門のあたりが、夢に見た風景とそっくりだったのである。しんと静まりかえった恐ろしさは今も忘れられないという。それきり、その家をもう一度見たいと思って何度も探したが、歩き慣れた界隈なのに二度とたどり着けなかった。
原典より
昭和五十年の summerのこと。—— 現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。