夢に授かった子育の霊薬夢想丸
どんな伝承か
梅の木から尊像が現れた奇瑞が伝わると、近郷から参詣する者が次第に増えた。元和三年、住職の玄鏡がいた夜、にわかに室内が明るくなり、よい香りが満ちて薬師如来が現れた。瑠璃の壺を手にした如来は、日ごろの信心により神丹を与えるので広く難病の子どもに施せと告げ、壺の中から薬の処方を授けたところで夢が覚めた。玄鏡が教えのとおりに薬を作って病んだ子に与えると、治らない者は一人もいなかったため、遠近の村人が相次いで参詣し、子育の薬師とも呼ばれた。この薬は夢想丸といったが、その製法は今に伝わっていない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
城西風土記と昔語り(熊沢宗一・1959年(昭和34年))
『城西風土記と昔語り』は、東京中野の江古田に住んだ熊沢宗一が昭和三十四年に著し、自ら発行した郷土誌である。中野長者と淀橋の伝説、御犬小屋や桃園の旧跡、新井薬師、江古田の獅子舞、内藤新宿や高田馬場の昔語りなど、中野と近在の伝説・旧跡・寺社を、古文書や碑文、琵琶歌も交えて記す。全二十章の後半には著者の百姓時代や終戦直後の食糧事情、台風の被害、日露戦争の軍隊日誌を収め、巻末に著者略歴を付す。