武周池へ移った蛇女房と大石五平
どんな伝承か
丹生郡殿下村二つ屋の武周池の伝説は、語り継がれる間に何度も手が加えられた話である。今立郡五箇の庄の三田村氏は、加賀の山中温泉で摂津の城主と知り合い、その娘を嫁に迎えた。だが嫁は部屋にこもって夫とも目を合わせず、やがて腋に鱗、頭に角が生えて家を出た。上池田村志津原の老夫婦におむろが池への道を尋ね、片袖を礼に口止めしたが秘密は漏れ、夜叉ヶ池へ向かう途中、茶屋の婆に武周池を勧められる。道に迷った女を大石五平が泊め、池へ案内する代わりに毎朝銭と生魚を贈ると約束した。五平の家は富んだが、妻に秘密を話すと贈り物は絶えた。寛文五年八月には池があふれ村が大洪水に遭ったという。
原典より
さうして月日を經たが、次第に女の腋には鱗が生え、頭には角が出て家には居られず、上池田村の志津原のある老夫婦の家にたづねて行き、おむろが池を教へてくれるやうに願つた。—— 福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年))
『福井縣鄕土誌 民間傳承篇』は、福井市立実科高等女学校の郷土誌第二輯として教諭中塩清之助が編み、昭和十四年二月付の学校長金岡正孝の序を巻頭に置く。丹生郡の名、哭女、越前萬歳、仏の舞、幸若舞、猫塚、隠れ里、子育て幽霊、愛発の関、弁慶譚、八百比丘尼、水の神女譚を、古文献や他地方の類例と照らして論じる。生徒が集めた県下の昔話は類話をA・Bなどに分けて並べて解説を付し、校正者大村四朗の跋を添える。