おいてけ堀の狸と旗本小宮山左膳
どんな伝承か
堀端の葦の茂みに老いた狸が潜み、釣人が獲物を提げて帰ろうとすると「おいてけ」と不気味な声を掛ける。驚いた釣人が魚を放り出して逃げ帰ったことから、おいてけ堀の名が生まれたという。後年の講釈や落語が尾鰭を付け、錦糸堀に住む旗本小宮山左膳の後日譚まで生まれた。若者に捕えられて狸汁にされかけた狸を、左膳が亡妻の命日だからと買い取って逃がしてやると、狸は美しい女に化けて毎晩通い、仇討ちに加勢したと語られる。堀の場所は柳橋あたりの三味線堀の落口だとする説もある。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸動物民話物語(窪田明治)
『江戸動物民話物語』は、「郷土史・東京」の刊行会を主宰した窪田明治が、東京の郷土史を調べた材料から江戸の民話を選んでまとめた本である。狐や狸、猫、蛇が人を化かし、恩を返し、祟る話を中心に、本郷・王子・向島・麻布・三田など東京各地に伝わる話を収める。狐・狸・猫・蛇・不思議な生き物の五部に分け、一話ごとに舞台となった土地の史跡や寺社の由来、沿革の解説を添え、まえがきとあとがきを付す。