暗い坂道で踏んだツチコロビ
どんな伝承か
昭和初期の話。蒜山は中国山脈の中の山で、鳥取と岡山の県境にそびえ、上・中・下の三山からなる。ここにはツチコロビという、体の短い蛇のような生きものがいるといわれていた。土の上を転がるようにして、あるいは転がって走って人を追いかけるのだそうだ。その山麓、鳥取県側には南谷という村がある。ある晩、大鳥居の部落では公会堂で寄合いがあった。閉会して帰る途中、真っ暗な坂道で熊蔵さんがツチコロビを踏みつけてしまう。とたんにそれがコロコロと転がり、熊蔵さんは仰向けざまにひっくり返った。石ころを踏んだのだろうと言う者もいたが、熊蔵さんは絶対にツチコロビだったと譲らない。夜更けには里にも下りてくるのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。