障子に映るワゴウの影
どんな伝承か
明治十年頃の話。佐藤良一という人が寺子屋の師匠をしていた。この人の家では、毎晩のように、月明かりか何かの加減で障子にワゴウの影が映るのであった。ワゴウとは、品のあるおっとりした少年をしばしばそう呼ぶ言い方である。これは蛇のしわざであったと分かって、難を免れたという。おおかたこの家の主婦を誘惑しに来たのだろうと村の人々は噂し合った。主婦はコダレタ女、つまり姿も心の持ち方もふしだらな女であったそうだ。この話をした人は寺子屋に通っていて、師匠から直接聞いたのだといっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。